Is that structure essential?
TIRES GALLEY / 2024
DESIGNART TOKYO 2024

量産プロセスで重要な、品質管理や在庫管理を優先した設計から、ユーザーとメーカー両者の新たな関係を模索した設計のソファを製作しました。ソファは仕様としてさまざまなマテリアルが使われ、クレーム対策の製造管理と納期対応の在庫管理の観点などから分解性を考慮することが難しい製品です。
その結果 内側のクッション材などは経年劣化により製品寿命が限られ、交換修理もできず、最終的に分解もできずに廃棄されます。
このような一例の違和感を出発点に、分解性を考慮した構造や再生利用を目的とした素材等を採用し再設計を行いました。

単一のマテリアルが接合され、ファブリックでクッション材をくるむこともせず、それぞれの素材のまま再利用が可能な設計です。そして普段はファブリックによって隠されているクッション材に再生可能な単一樹脂素材を採用し新たな質感を提示します。
これらの仕様はポジティブな感情だけではない、ネガティブな感情を与えることも予想します。
そのネガティブな印象をユーザーが受け入れ、全てが満たされることが当たり前の世の中に少しの余裕を生み出すことができたらと考えています。

前提として、ひとの生活を豊かにするプロダクトを安定して生産する量産という行為を、自分は肯定的に捉えています。
けれど量産という行為が持つ多くの目的によってもたらされる歪みに、インハウスとフリーランスそれぞれの立場を持つ自分は様々な葛藤や矛盾と向き合いアウトプットを続けています。
特に組織のひとりというインハウスデザイナーの立場では、その違和感から目を背けてしまうことが往々にしてあります。
その歪みの正体がどのようなものであるのか、どのような設計を自分は求めているのか。
自分が抱くこの思いを発信することで、新たな価値観が世の中へ浸透する可能性もあるのではないかと考えています。